【審査結果】

 徳島大学常三島キャンパス イノベーション・コモンズ整備にかかるアドバイザー選定コンペティションには総勢13件の応募をいただきました。学生が集いやすい、地域・企業を感じる、チャレンジを後押しする場というテーマに対して、それぞれ多彩でユニークな提案をいただきました。審査では、応募者の経歴・実績に加えて、提案のコンセプトや提示条件との整合性、機能面、デザイン、予算や法規制約下での建築可能性などについて専門的に評価した上で、工学部創立100周年事業キャンパス環境整備ＷＧ（委員17名）の投票にて、2次審査対象4件を選定しました。2次審査では、7月23日（火）に公開のプレゼンテーションを実施し、上記委員に加えて特別審査員として寄附者より1名を加えた審査員の投票を行って、優秀賞3件、入賞１件を選定しました。さらに会計手続きの結果、下記の提案者をアドバイザーとして選定いたしました。

           作品タイトル  YADORI Café

工学部創立100周年記念事業キャンパス環境整備ＷＧ長 山中 英生 

【優秀賞・入賞作品の講評】※作品名をクリックすると提案書がご覧いただけます。

【優秀賞】YADORI Café

環境デザインワークス一級建築士事務所 清水裕且 
タニアトリエ一級建築士事務所   谷 紀明 

 イノベーション・コモンズとして、内部の曲線がもたらす「自由」と直線的な構造形式の「秩序」を表現し、「宿り」として「共創」をもたらす建築として提案している。トラス屋根による大空間の内部を可変間仕切りにすることで、自由な場づくりが可能となっており、 屋台などの装置も提案している。利用されづらい大径材を活用する手法を提案しているほか、木造らしいデザイン、豊かな木材の表情が感じられるデザインが高く評価された。ただし、大きな奥行の軒下空間を整備する提案のため、シンボルストリートとして整備されている芝生のビスタの喪失が懸念される点が指摘された。

【優秀賞】知の入会地にかかる小径材の屋根

有限会社 内野設計 内野輝明  

 対象地の歴史的変遷を踏まえ、対象地を大学内と大学外の「知の入会地（＝コモンズ）」と位置づけ、歩道を水際に見立て、水際に立つ建物というコンセプトを提案している。小径材を組み合わせた柱のみで大屋根を構成したシンプルな構造を用いて、自由度の高いワンルールの空間を構成するとともに、県産材普及・備蓄を目指した小径材（４寸角材）の活用が特徴となっている。良質な材確保のための発注時期を工夫する提案もなされたが、その実現性について懸念が残った点が惜しまれた。

【優秀賞】学生コモンズ

游・空間デザイン室  林 裕子 
村上真二級建築設計事務所  村上 真 
四方山設計一級建築士事務所  𠮷田涼子 
徳島大学  尾形 碧 

 学生が求めるカフェについてのヒアリングをもとに、「すべての学生と教授にとって使いやすく、通いやすい」「公園のような集いやすさ」というコンセプトを提案している。企業ＰＲだけでなく学生の研究をＰＲする場となるように、自由の区切りを作るため、小径材を細かな間隔で配置する「柱の空間」を用いている。セミナースペースを階段形状で提案している点も特徴が見られる。２Ｆに配置したミーティングスペースへのアクセス確保のため、隣接する建物２Ｆとの渡り廊下整備のアイデアも評価された。ただし、セミナー空間の利用しやすさ、林立する柱による空間の使い勝手などに懸念が残る点が惜しまれた。

【入賞】出会いと学びの交差路−100 年の歴史に未来の橋をかける−

（株）かたちとことばデザイン舎一級建築士事務所 ��橋広樹 
（株）片岡構造 片岡慎策 
日本デザインセンター 永高裕太 
徳島大学・とくしま建築学生スタジオ 吉田充希 
徳島大学・とくしま建築学生スタジオ 岡本海輝 
徳島大学・とくしま建築学生スタジオ 西岡功太郎 
徳島大学・とくしま建築学生スタジオ 白石悠喜 
徳島大学・とくしま建築学生スタジオ 大島愛優博 
徳島大学・とくしま建築学生スタジオ 中井希優 
徳島大学・とくしま建築学生スタジオ 佐光希太 

 対象地の歴史的変遷の分析に加えて、現地観察から発見したとするシンボルストリートを斜めに走る軸線を活かし、芝生空間へ多方面から導線を確保するため、既存カフェの上部にかかる扇型の橋梁状の建築を提案している。コンセプトが明確に外観によって表現されており、シンボル性の高い建造物となる点が評価されている。ただし、２Ｆ部分が主体となるカフェへ学生らを誘導することへの懸念、エレベータ設置等による維持管理費用上の課題が懸念された。